オール沖縄会議

辺野古新基地建設をめぐる米国での動き(報告)

下記のURLから2月1日の辺野古ゲート前県民大行動の集会での吉川秀樹さんの発言を動画をご覧いただけます。 https://youtu.be/hob_vXrqU5U 辺野古新基地建設をめぐる米国での動き(報告) 市民社会による粘り強く続く現場での座り込みや抗議行動、軟弱地盤や環境の問題の露顕、県や国会/県議会議員の取組み、そして辺野古反対の県内外の声は、辺野古新基地建設が計画通りに進んでいないことを日本政府に認めさせた。仮に県知事が設計変更を承認したとしても、完成にはその時点から12年以上が必要で、2030年代と言われている。日本政府は「辺野古が唯一」と米国政府に「確認」を続けるが、辺野古新基地建設がより「問題化」していることは明らかだ。 この事実を顕著に表しているのが(皮肉にも)元在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長のローバト・エルドリッジ氏によるThe Japan Times(2020年1月17日)への寄稿文だ。エルドリッジ氏は、辺野古に固執する12の理由を皮肉を交えて挙げながら「私が海兵隊と関わってきた20年間で、辺野古がgood ideaとする士官/将校(officers)に出会ったことはない」「この問題が日米二カ国の関係と沖縄と本土の関係を蝕んでいき(日本政府の報告書が提出された後、米側の担当者は日本政府の無能さを非難した)、最も損失を被るのは日米両国の国民/納税者だ」と述べている。 辺野古新基地建設の強行が、国防総省/米国にとっても(よって日本政府にとっても)問題となることをまず私たちが認識し、国内外に伝えていくことが大切だ。以下、米国での最近の動きを3つ紹介し、それらの動きと私たち市民がどのように連動できるかを提案する。 2020年度米国防権限法 去った12月20日に成立した「2020年度国防権限法」には、辺野古新基地建設に関連する1260K条項と1255条項が盛り込まれた。1260K条項は、法成立後「180日以内に、国防総省長官は、連邦議会の国防衛(軍事)委員会に対して、沖縄、グアム、ハワイ、オーストラリア、そしてその他の地域における米国海兵隊員の分散配置計画の実施状況について報告書を提出すること」と義務づけている。特に分散配置の実施を制約・制限する「政治、環境、その他の要因」を示すことが求められていることは注目される。1255条項では「普天間代替施設に関連する日本政府の貢献」についての報告を、米会計検査院の院長が連邦議会の関連委員会に行うことが求められている。同法成立の過程において、辺野古新基地関連の条項は一度削除されたが、日米の市民社会のメンバーや、県知事や国会/県議会議員の働きかけにより再び盛り込まれたことは重要である。 勿論、日本政府は「基地建設は順調に進んでいる」「政治的にも環境的にも問題はない」「辺野古新基地建設で日本政府は貢献している」という主張と情報を米国政府に提供していくであろう。しかしこれは同時に、私たちから米国政府、連邦議会に対して「民意は基地建設NOだ」「基地建設は不可能だ」「建設強行は米国の立場を悪くする」という情報と主張を提供する機会にもなりえることを意味している。また、普天間基地のPFAS、騒音、安全性の問題を訴え、普天間の早期返還を求める重要な機会にもなる。さらには、ユネスコ世界自然遺産候補地のやんばるの森に隣接して米軍の訓練場があることの矛盾を指摘し、訓練の中止、訓練地の返還を米政府に訴える機会にもなる。市民社会が自ら動くことは勿論、県や国会/県議会議員にもこの機会を活かしてもらうことが必要だ。 Hope Spot/希望の海 去った年10月27日、米国NGOのミッションブルーが、辺野古・大浦湾一帯をホープスポット(Hope Spot:希望の海)に認定した。世界各地で100カ所以上が認定されているが、日本では初となる。対象範囲は、辺野古・大浦湾を中心にした名護市天仁屋から宜野座村松田までの44.5平方キロメートルの海域である。今回の認定は、辺野古・大浦湾一帯の生物多様性や地形の豊かさ、その豊な環境で育まれてきた文化や暮らし、そしてその豊かな環境を基地建設から守ろうとする多くの人々の取組みが世界的に認められことを意味する。(ちなみに、米国最大/世界第2ので、日本の国土面積の4倍もあるハワイ州のパパハナウモクアケア海洋ナショナル・モニュメント(海洋保護区)には7,000種の海洋生物が生息しているが、僅か約20平方キロメートルの辺野古・大浦湾には、260種余の絶滅危惧種を含む5,300種の海洋生物が生息している)。 ホープスポットの認定自体が基地建設を止めることはないが、認定をきっかけに、環境保護と建設反対の運動をさらに結びつける努力が行われている。例えば、日本自然保護協会は、辺野古・大浦湾を工事の影響がホープスポットに認定された周辺海域にまで及ばないよう、沖縄県による一歩踏み込んだ保護の取組み(アオサンゴの天然記念物指定等)を要望する3本の意見書が提出している。その意見書を支援する署名は、音楽家の坂本龍一氏の協力もあり、現在1万8千人以上の署名が集まっている。 さらにホープスポットのネットワークを活かしたエコツアーリズムの可能性にも注目される。例えば、ホープスポットである米国カルフォルニア州のモントレ―湾やオーストラリアのモートン湾は、エコツアーリズムにより地域の環境保護と経済活動の両立を図り成功している地域である。辺野古・大浦湾一帯のホープスポットにおいても、それらの地域から学び、地域発展の取組みが行える。 ホープスポットの動きに関して私たちがまず出来ることは、家族、友人,知人に声をかけて辺野古・大浦湾一帯のホープスポットを実際に足は運んでみること、楽しんでもらうことであろう。そしてホープスポットの署名に協力することであろう。 ジュゴン訴訟とIUCNによるジュゴンの評価 2003年より紆余曲折を経ながら現在まで続く米国ジュゴン訴訟は、この2月3日に第9巡回控訴裁判所において公開審理(hearing)(日本の裁判での結審)を迎え、今後判決を待つことになる。2018年8月の連邦地裁の判決を不服とした原告は、今回の控訴審で以下のことを求めている。1) 辺野古新基地よるジュゴンへの影響について、国防総省が地域住民や環境団体などと協議を行わなかったことは米国家歴史保存法に違反していると判断すること。2)新基地によるジュゴンへの「悪影響はない」とする国防総省の「報告書」の結論も違反していると判断すること。3) 国防総省の「報告書」を無効とすること。4) 原告が要求した工事の差し止めについて連邦地裁に考慮するように差し戻すこと、である。 裁判の枠組み上、控訴審は基本的に2014年4月までの国防総省の取組みをめぐって争われており、2月3日の公開審理でも工事開始後のジュゴンへの影響の議論は行われなかった。但し、2018年4月に亡くなった翁長雄志知事が、基地建設によるジュゴンへの影響についての懸念を示し、また国防総省との協議を要請し国防総省に送付した書簡は、控訴審で言及されており、その書簡がどう判決に反映されるかが注目される。 ジュゴン訴訟について私たち市民は判決を待つことになるが、ジュゴンへの影響について控訴裁判所が聞こえるように声をあげていくことは出来る。今後、ジュゴン訴訟から派生した形で展開してきた米国連邦政府機関(海洋哺乳類委員会と国家歴史保存諮問委員会)への市民からの働きかけがさらに重要となる。その際、昨年12月に国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおける、沖縄のジュゴンが独自の個体群(南西諸島地域)として分類し、Critically Endangered (近絶滅)との評価が重要な意義をもつことになる。(これらの取組みに対しての支援をお願いしたい。) そして私たち市民誰もが出来ることは、長い間裁判を闘ってきた原告とEarthjusticeの弁護士に感謝と労いの意を示すことである。沖縄の原告に声をかける。日本や米国の原告、そして弁護士にハガキや手紙を送る。それが次なる取組みへと繋がっていく。 http://okinawaejp.blogspot.com